大人が楽しめる動物の本

動物大好きな大人の皆さまに贈る、私のお勧めの動物本です! フィクション・ノンフィクション取り混ぜて、ご紹介いたします。

『うちのカメ』

 カメ好きにはたまらない一冊です。うちにも、この本に出てくるのと同じクサガメがいるので、前から読みたいと熱望していましたが、かなり古い本なので、近くの本屋で買うこともできず、札幌市図書館のネット予約サービスを利用して、やっと読むことができました。あまり知られていないマイナーな本のような気がしていましたが、他にも予約している人がいて、予約順は5番目になり、根強い人気があるのだなーと、感心しました。

どんな内容

 虫の研究者である大学教授の作者が、子ガメを手に入れてから、カメを飼育していく数十年にわたる飼育記録になっています。発行年は1995年ですが、その中ですでにカメの年齢は35歳と書かれてあったので、今のようにペット飼育の情報もあまりない中で、いろいろ自分たちで試行錯誤しながら、工夫して飼っていく様子が描かれていて、とても興味深い内容となっています。

お勧めのところ

カメ飼育者には

 クサガメのような水辺に棲む水亀というと、水槽やタライの中に水を張り、石など入れて丘を作って飼うようなイメージがあるかと思いますが、なんと作者は家の中でカメを放し飼いにしています。風呂場に水場を作り、自由に出入りさせて、あとは居間や廊下を自由に歩き、好きな場所で昼寝をし、気ままに過ごしているのです。犬猫のように、自由を与えらえたカメは、自分の意思でお気に入りの場所を見つけ、一日を過ごしています。その様子は、水亀飼育の常識を覆す、驚きに満ち溢れたものです。自由な環境をあたえられると、こんな生活を望むのだというカメの意思を知ることができて、とても興味深い本です。それを知っても、ほとんどの人はこのような自由な環境で飼育できるわけではないでしょうが、水槽飼いだとしても、カメ飼育の参考のために、一読の価値ありです。

 それに、飼い方に違いがあっても、共通するカメあるあるをきっと見つけられ、ホッと笑顔になったり、頷いたりすること間違いなしです。 

動物好きさんには

 白黒の写真ですが、随所にカメの様子が載っており、しかもカメが作者に懐いていて、とてもかわいいです。作者の座っている膝の上に乗って昼寝をしたり、作者といっしょに昼寝をしている様子は、動物好きにはたまらない魅力にあふれています。特に犬猫の話題にちょっと物足りなさを感じている、コアな動物好きさんには、必読の書ですね。爬虫類でもこんなに懐き、コンパニオンアニマルとして毎日を過ごしている様子は、目を見張るものがあります。思わずカメを飼いたくなってしまうかもしれません。

 私も、我が家にクサガメが来る前は、きっとあまり反応のないそっけない生き物だろうと思っていたのに、いざ飼ってみると、その可愛さにすっかり魅了されてしまいました。動作はゆったりですが、心は穏やかで、人のそばにいるのが大好きです。アイコンタクトもちゃんとできて、話しかけるとじっと見つめてきます。おいでと手を差し出すと、自分が乗りたいときには乗ってきて、嫌な時は手でよけようとします。うちの子はまだ3歳ですが、時間をかけて少しずつ気持ちが通じてきて、じわじわと仲良くなっている感があります。いぶし銀の魅力ですね。

 この本のカメはすでに35歳で、まだまだ長生きしそうだと作者は書いていましたので、とても寿命の長い生き物です。長く家族でいられる素敵なペットですが、同時に、かなり長期的な飼育の展望をもって、心して飼い始めることが必要ですね。この本を読んで、カメ飼育に興味が沸いてきても、決して軽い気持ちで飼い始めることはしないように、ご注意くださいね。

書籍情報

「うちのカメ」
著者  石川良輔
発行  八坂書房  1994年