大人が楽しめる動物の本

動物大好きな大人の皆さまに贈る、私のお勧めの動物本です! フィクション・ノンフィクション取り混ぜて、ご紹介いたします。

『家族になったスズメのチュン』

 

 獣医でもあり、動物写真家としても知られている、竹田津実さん著作本です。北海道に住む私にとって竹田津さんと言えば、すぐ「キタキツネ」を連想してしまうので、どうしてスズメの本なのかとちょっと意外な気がしました。でも、この本にも、入院中のキタキツネも登場しますし、道東で獣医をして、家畜やら野生動物やらを診療しながら、こんな楽しいスズメの本も書いてしまったのですね。この本を読んでいると、生き物と共に暮らしている、作者とその奥さんの優しさが伝わってきて、とても暖かい気持ちになりますよ。

どんな本か

 弱ったスズメのヒナ、まだ丸裸の赤ちゃんスズメ「チュン」が獣医である作者のもとに運び込まれ、それを育て、野生に返そうとする実際の記録です。かわいいチュンの写真もふんだんに使われています。ただ、このスズメは、すくすくと成長し無事に野生に帰っていった、というのではなく、一時期、かなり長い期間、野生に帰ることを自ら拒み、人間の家族として一緒に暮らしていたのです。自分を人間と思っているような行動、人間や他の動物たちとの兼ね合いが、面白く生き生きと描かれています。

お勧めのところ

チュンの成長

 小さい一羽のスズメが、色々な感情を持ち賢く行動していることに、改めて感心し、小さくともりっぱな命の営みに感動しました。スズメのチュンは元気になっても野生に帰ろうとせず、長い期間、作者の住む人間の家で、家族となり、自由に飛び回りいろいろな興味深い行動を示してくれます。獣医である作者の解釈とともに、雄スズメの成長過程が、とてもよくわかります。甘えるだけの赤ちゃん時代から、一羽の大人の雄スズメとなっていく姿が、頼もしくもちょっと寂しいような気持ちにもさせられます。どこにでもいるのに、いまいちよくわからなかったスズメのことが、いろいろ理解できて、より身近に感じられます。

人間と生きたいチュン

 作者はペットとしてではなく、あくまでも元気にして野生に返すことを目指しているのに、肝心のスズメのほうは、すっかり家になじんで、外に出ていこうとしません。作者がいろいろと手を尽くして、野生に返そうと奮闘しているさまがとても面白いです。(面白いと言っては失礼ですが。)繁殖期になって巣作りをしても、スズメの雌には全く興味を持たず、作者の奥さんに、求婚している様など、思わず微笑んでしまいます。

自然の中の獣医さん

 北海道の東端の地で獣医をしている、作者の生活も垣間見れて楽しいです。ケガなどで弱って運び込まれてくる野生動物たちのその入院の様子なども、描かれています。窓を開けると、窓辺には様々な種類の鳥や小動物などが行きかい、家の中までも入り込んでしまうような、自然がいっぱいの生活は、動物好きにはたまらないもので、一気に読み終えてしまうこと間違いなしの内容です。文章自体もとても読みやすく軽快ですので、ぜひご一読ください。

書籍情報

著者  竹田津 実
発行  偕成社 2006年